第7回年次大会に向けて募集しておりました「C:分科会企画」に、今年度は【12の企画】が寄せられました。
昨年度より新設された「C:分科会企画」は、研究者・実践者・学生など多様な立場の参加を促し、ソーシャル・イノベーションに関する活発な議論の場として大きな成果を上げてきました。今年度も幅広い提案が集まり、多彩な分野からの挑戦が見られます。
採択された企画は、年次大会当日に分科会として実施され、参加者との対話や意見交換を通じて、新たな知見とつながりが生まれることが期待されています。
詳しい分科会一覧は、以下の「公募分科会一覧表」をご覧ください。
*以下に、12の各分科会の企画内容・詳細をご案内いたします。
日本の農林水産業は、人口減少と高齢化による生産基盤の弱体化や市場の縮小、気候変動による生態系や環境の変化による被害のリスクに晒され、危機的状況にある。一方で、コロナ禍や国際情勢の不和により、輸入に依存する日本の需給の脆弱性が顕在化した。食料・木材自給率は低下し、水産資源も年々減少する中で、持続可能な社会構築には、農林漁業システムの変革が必須となっている。そうした中、有機農業や自然農、環境保全が t 漁業、自罰林型林業等、ネイチャーポジティブを実現しながら地域経済の活性化に繋げるビジネスモデルも登場するようになった。
そこで本分科会では、農・林・漁業における社会的企業家に登壇いただき、そのビジョンや経験や社会的インパクトを共有しつつ、人の暮らしの根本である衣食住に関わるシステムをイノベーションするために、どのような制度や政策が必要か、そしてそれを実現する求められる人材とはどのようなものか、そうした人材育成にアカデミアができることとは何か、などをディスカッションする。
■ 小林加奈子氏(株式会社小林ふぁーむ 代表取締役)
ミニブタの出会いから農業を始めたというユニークな経歴。京都府福知山市で新規参入で農業のフランチャイズモデルを実践している。質の高い産品を作り高付加価値で外貨をしっかり稼ぐというコンセプトで、地域を巻き込む新しい農業の形を実践している。
■ 奥田悠史氏(株式会社やまとは 取締役・森林ディレクター)
木工職人とデザイナーがタグを組み、「豊かな暮らしづくりを通じて豊かな森をつくる」をコンセプトに、自然循環を活用し、農林業事業や、森林資源を待避等資材への活用や森を遊び場づくりなど、多面的機能を活用した持続可能な林業モデルを実装している。
■ 銭本慧氏(合同会社フラットアワー 代表)
研究者として漁業に携わるも自ら水資源保全型の漁業モデルを構築したいと起業、一本釣りのみでの漁業モデルを確立、漁師の働き方改革も実現。水産業のみならず地域企業と連携し企業研修やブルーツーリズムコンテンツも開発し、地域振興にも取り組む。
大石尚子(龍谷大学政策学部教授)
各パネリストから自己紹介を含む活動を紹介いただいたのち、「一次産業を変革するためにはどのような人、もの、ことが必要か」をメインクエスチョンに、コーディネーターからいくつかの質問をパネリストに投げかけ、会場からの質疑応答とコメントを交えて、ディスカッションを展開します。
1)活動紹介:60 分(各パネリストから20分)
2)参加者からパネリストへの質疑応答:5分
3)ディスカッション:25分
昨今、大雨による土砂災害、地震に対する防災対策が叫ばれているが、防災対策は各地域によって異なるのではないだろうか。過去の災害体験によって個人が思い描く災害対策の温度差もあり、必ずしもある地域の事例が全ての防災に役立つわけではない。防災対策は地域ごとに違いがあるのではないかという観点から、全国一律の防災に関する認識を改めて見直し、地形、街並みを立体的に俯瞰するやわらか凹凸マップを使ってインフラを再認識することで、地域に即した防災対策~防災教育につなげたいと考える。今回は、過去において大雨による土砂災害は多く発生していて経験はあるが地震の経験はない大津市在住のメンバーと地震や豪雨を幾度も経験している加賀市在住のパネリストの話を比較し参加者の方々とディスカッションを実施し新たな視点から防災教育を生み出したい。
挨拶と趣旨について 小林和子(一般社団法人 民泊観光協会)
石川県、滋賀県在住の 2 名のパネリストに各地域の歴史、語り継ぎ、住環境、災害経験、地域防災、防災意識について発表していただきます。
■ 河西 紀明 氏(石川県加賀 )
一般社団法人 民泊観光協会 理事 (石川支部)
黒崎 BASE(民泊)運営者/やどかりプロジェクト主催
■ 他谷 尚 氏(滋賀県湖西)
株式会社オシンテック
各発表地域の地形、街並みを立体的に俯瞰するやわらかな凹凸マップを使ってインフラを再認識しつつ新たな視点から防災教育についてのディスカッションを行います。
服部篤子氏(大和大学教授)
茶の湯療法は、いけばな療法の理論を基盤とし、認知症の方、心の病を抱える方、ひきこもりの方々を対象に実践されている新しい文化療法です。茶道は華道と同様に長い歴史を持ち、生活文化として人々の営みに根付いてきました。加えて、茶には健康促進や認知機能の維持に寄与する成分が含まれ、予防的効果が期待されています。茶の湯療法では、五感への働きかけや記憶の喚起を重視し、精神的安定や社会的交流の促進を図る点で、いけばな療法と多くの共通項があります。実践では、初心者にも親しみやすく参加できるよう、最小限の道具を収めた携帯可能な「茶箱」を用いています。茶箱は千利休の時代より野点などに用いられていた伝統の道具であり、現代の実践においても活用されています。本分科会では、2018 年より高齢者施設で実施してきた事例や、近年のひきこもり支援の場での応用について紹介します。また、宇治の「いけばな街道」で一般市民を対象に行った「茶の湯療法体験」の取り組みを報告し、地域の子ども、高齢者、さらには海外観光客による反応についても考察を加えます。
分科会ではまず、高齢者施設等で実施している「茶の湯療法」「いけばな療法」の体験を会場で行い、その後、理論の説明や参加者の体験の共有を通じて理解を深めます。華道や茶道に限らず、伝統文化が心身のケアに役立つという社会的価値を定着させていく今後の展開について、皆さんと議論できればと考えています。
■ 浜崎英子
いけばな療法、茶の湯療法考案者。NPO 法人フラワー・サイコロジー協会理事長。公認心理士。華道、茶道を活用した不登校、ひきこもり、認知症ケア等のプログラムの実践
■ 浅井清美
NPO 法人フラワー・サイコロジー協会理事。日本いけばな療法学会公認いけばな療法士。介護福祉士。いけばな療法や茶の湯療法を活用した認知症や障がい者ケア等のプログラムの実践。
■ 河本 円
いけばなん療法士、茶の湯療法士。茶道裏千家教授。日本いけばな療法学会会員。NPO 法人フラワー・サイコロジー協会所属。茶道を活用した認知症ケア、不登校、ひきこもり等の支援。
■ 吉本佳美
日本いけばな療法学会公認いけばな療法士。NPO 法人フラワー・サイコロジー協会事務局。日本いけばな療法学会事務局長。フラワーアレンジメント講師
■ 分科会趣旨説明 15:30~15:40
■ グループ分け 15:40~16:30
「茶の湯療法」と「いけばな療法」の体験。どちらの体験をされるかは選択できます。
■ プレゼンテーション 16:30~16:50
「茶の湯療法といけばな療法との接点と日本文化の新しい活用法について」 浜崎英子
「認知症ケアの茶の湯療法について」 浅井清美
「ひきこもり支援の茶の湯療法について」 河本 円
■ 参加者からのフィードバック・質疑応答・まとめ 16:50~17:00
※茶道、華道の経験者、未経験者、どなたでも参加していただけます。
Coda schoolは、日本で唯一の「小中高生のための大学院」である。小中高生は、自ら問いを立て、調査・分析を行い、論文にまとめて発表するという「研究」に挑戦する。正解を探すのではなく、研究として新しい知を創出することを目指している。
小中高生の研究を支えるのが、大学生・大学院生の講師である。彼らは「協働研究者」として、小中高生と協働して研究を進める。協働とは、各々の得意なことを活かしながら、力を合わせて取り組むことである。Coda schoolでは、小中高生が大学生・大学院生講師、さらには大学教授や専門家とも協力しながら研究を進める。この取り組みを「協働研究」と呼んでいる。
Coda schoolは、研究活動を通じて小中高生が自らの意見を自由に表現できる社会の実現を目指す。これは、国連子どもの権利条約に定められた「子どもの意見の尊重」を体現するものである。年齢に関わらず研究に取り組むことで、小中高生は自らの視点を社会に提示する機会を得る。小中高生が「研究者」になる社会を目指すことこそが、Coda schoolのソーシャル・イノベーションである。
本分科会では、Coda schoolの取り組みを紹介するとともに、本科生である小中高生たちが一人ずつ自身の研究テーマを発表する。また、講師として関わる大学生・大学院生らが、自身の学びや変容について報告する。最後にパネルディスカッションを実施し、小中高生および大学生・大学院生のバックグラウンドや研究動機を掘り下げ、研究活動を通してどのような学びや変容があったのかを、それぞれの立場から議論を深める。
■ 登壇者
小中高生のための大学院 Coda school本科生
・赤井聡太(開智望中等教育学校8年)
・太田諒介(箕面市立第一中学2年)
・名古屋友人(京都市立旭丘中学校3年)
・館森菜七(和光高等学校1年)
・志田樹陽(東京学芸大学附属高等学校2年)
小中高生のための大学院 Coda school講師
・柴田葉奈(京都工芸繊維大学工芸学部デザイン・建築学課程2年)
・根津創(京都工芸繊維大学工芸学部機械工学課程3年)
・日野皐汰朗(同志社大学大学院総合政策科学研究科博士後期課程1年)
・木佐貫拓眞(社会人)
■ ファシリテーター
西口優毅(小中高生のための大学院 Coda school/同志社大学大学院総合政策科学研究科博士後期課程3年/日本ソーシャル・イノベーション学会理事)
1)ファシリテーターから開会挨拶・趣旨説明
2)ファシリテーターからCoda schoolの取り組み紹介(理念、カリキュラム、協働研究の概要)
3)小中高生による研究発表(会場に5人の研究ポスターを掲示。各自が研究発表をするポスターセッション)
4)パネルディスカッション(3グループに分かれて、小中高生・大学生・大学院生講師による「自身の学びや変容
について」クロストーク)
5)ファシリテーターから総括・閉会挨拶
龍谷大学大学院政策学研究科、琉球大学大学院地域共創研究科、京都文教大学大学院臨床心理学研究科の3研究科は、2025年4月から「大学連携型ソーシャル・イノベーション人材養成プログラム」を開講しました。
このたび、日本ソーシャル・イノベーション学会研究大会の分科会として、3 大学院が合同で実施する PBL型必修科目「ソーシャル・イノベーション実践演習」(SI キャップストーン)の研究発表を開催いたします。研究発表では、「醍醐地域(京都市)の活性化」、「ファイナンスによる社会課題解決」、「学びの多様性(発達障害支援)」、「障がい者の雇用」という 4 つの社会課題について背景の洞察等に加え、社会課題や地域資源の見方の変化や新たな気付きについてプレゼンテーションを行います。
1)開会挨拶
2)「ソーシャル・イノベーション実践演習」(SI キャップストーン)について
3)研究発表 (各発表15分・質疑応答5分)
①「醍醐の活性化―醍醐未来創生プロジェクト―」(醍醐チーム)
SU JIA(龍谷大学)、馬玉成(龍谷大学)、北野嘉秀(龍谷大学)、大門祥一郎(龍谷大学)、森田博史 (龍谷大学)
②「ファイナンスによる京町家課題解決」(ファイナンスチーム)
山本安紋(龍谷大学)、オウ シュンカン(龍谷大学)、米丸隼太(龍谷大学)、山中智子(京都文教大学)
③「学びの多様性と教育をめぐる課題 ~発達障がい者のキャリア形成に関する現状と課題、支援の「つながり」について~」(学びの多様性チーム)
成松正樹(龍谷大学)、金田佳宏(琉球大学)、山入端力也(琉球大学)、横山温子(京都文教大学)
④「障がい者雇用の現況と地域資源の発掘」(障がい者雇用チーム)
西口高貴(龍谷大学)、林リエ(龍谷大学)、安里恵美(琉球大学)、橘今日子(京都文教大学)
4)閉会
ひとり親家庭に対する自立支援施策は、全国の自治体で展開され、就労支援が中心的な位置づけとなっています。制度は一定の成果指標のもとで運用され、重要な役割を果たしていますが、現場では、早期離職や就労ミスマッチ、子どもの不登校・発達課題、親の心身の不安定さなど、複合的な課題に直面するケースも少なくありません。
特に、親が“いきなり働く”ことへの心理的・家庭的負担は大きく、結果として早期離職や就労の断念につながることもあります。こうした課題に対し、本制度では「まず試してみる」機会としての職場体験やインターンシップを通じて、就労へのハードルを下げ、継続可能な働き方を模索できる支援のあり方を提案しています。
本分科会では、京都府が新たに始動した官民連携の就労一体型支援制度を紹介し、制度設計と地域展開に向けた議論を行います。
行政・支援団体・地域企業・研究者・当事者が一堂に会し、立場を超えて共に考える「体験型・共創型」の分科会です。
特に今回は、地域企業の協力を得て制度構築に参画している京都中ロータリークラブが、企業が支援の一翼を担うことの社会的意義についても発信します。
<企画者>
■ 浜崎英子
公認心理師/いけばな療法士/NPO法人フラワー・サイコロジー協会理事長/児童発達支援ネクストスクール心理士/京都府ひとり親家庭自立支援センタースーパーヴァイザー/ひとり親家庭当事者
「ひとり親家庭の“暮らし”から見えてきた支援のかたち──就労・心理・子育て・制度をつなぐ視点」
企画者は、公認心理師・発達心理の専門家としてひとり親支援に関わるとともに、ひとり親家庭の当事者であり、京都府ひとり親家庭自立支援センターのスーパーヴァイザー、企業コーディネーターとしても日々相談員支援や支援体制づくりを行っています。また、毎年いけばなを取り入れたペアレントプログラムをひとり親家庭自立支援センターで実施し、ひとり親家庭の子育ての課題にも向き合っています。
本分科会では、そうした現場と生活の両面からの実践知をもとに、具体的かつ多面的な議論を展開したいと考えています。
<登壇者>
■ 福阪圭輔
京都府建設交通部道路計画課、農林水産部農政課を経て、現在健康福祉部家庭・青少年支援課参事
「京都府がひとり親家庭支援において試みようとしていることとは」
■ 白數宗雄
京都府家庭支援総合センター、児童自立支援施設淇陽(きよう)学校退職後、京都府母子寡婦福祉連合会事務局長
「京都府ひとり親家庭自立支援センターが制度に期待すること」
■ 光本大助
京都中ロータリークラブ会長/瓦店有限会社代表取締役/瓦屋根工事技士/職業訓練指導員/京都府瓦工事協同組合/古材文化の会/京町家作事などの役員/一級技能士/京都金鱗会(金魚)/京都愛隣会(錦鯉)/京都洛中グリークラブなどの会員。
「ロータリークラブの奉仕事業とひとり親家庭支援事業への協力経緯と期待」
■ 新川達郎
同志社大学名誉教授 日本ソーシャル・イノベーション学会代表
まとめ「制度設計と全国展開への展望、社会がどう変わるのか」
10:40〜10:55 企画趣旨とひとり親家庭の現状・課題・新しい取り組み(浜崎英子)
10:55〜11:10 制度と協力体制の紹介(登壇者:福阪圭輔・白數宗雄・光本大介より)
11:10〜11:20 ひとり親家庭の事例紹介(2例)
11:20〜11:45 ワークシート記入+ペア⇒グループ対話:「この人に伴走するには?」※登壇者も会場に混じって参加
11:45〜11:55 会場の声の共有+登壇者の気づきと今後の行動(進行:浜崎英子)
11:55〜12:10 まとめ:制度の新規性と社会的展望(新川達郎)
この分科会では、「会場内に小さな社会を再現する」ことも目指します。 参加者は、隣に座る人が
誰かを知らない状態でスタートします。 それは、ひとり親家庭の方が日常の中で「自分について語
る場」を持てない状況に似ています。
*自己紹介タイムはありません
通常のグループワークでは、まず自己紹介から始まることが多いですが、この分科会ではそれをあえ
て行いません。 「となりの人が何をしている人か知らないまま、どう関係を築くか」それを、体験
していただこうと思います。
この体験は、ひとり親の方が社会の中で直面する「語るタイミングのなさ」「語る場の不在」を、自
分の身体感覚として感じることにつながると考えています。
*ワークシートの作成をお願いします
制度構築へのご協力、また自分が当事者ならという視点でこの分科会に参加してもらえるツールとし
たいと思います。
縮む社会をどう生きるか?パラレルキャリア、ミックスキャリアの可能性~ソーシャル・イノベーション・アカデミーの挑戦~
内藤達也(NPO法人and Advance・セカンドキャリア研究会研究会)
人生100年時代を迎え、従来の単線的・並列的な「キャリア」のあり方を越え、職業・学び・社会貢献などを有機的に組み合わせる「ミックストキャリア」への注目が高まっている。本研究会では、セカンドキャリアを豊かにする要素や学習手法を探る中で、仕事・家庭・社会貢献・自己研鑽といった複数要素が連続的かつ重層的に自己と社会に作用する共通項を整理してきた。さらに、メインキャリアに影響を与える構造と、与えない構造の二軸で分類しつつ、個人の幸福観や評価基準を「変える」「拡張する」「再定義する」「行動に転換する」という4つの変化タイプを提示。これらは、ミックストキャリア形成の核心的変化として組み込むべき視点である。加えて、リモートワーク普及や副業・兼業解禁など働き方の多様化と、教育・行政領域でのリスキリング推進やウェルビーイング志向の高まりを背景に、従来の「パラレル」型キャリアから脱し、「統合」型キャリアを志向する社会潮流が進展している。国や自治体、企業では、自らの価値観・生活設計・社会的意義などを統合的に捉えるキャリア支援への制度整備(キャリアコンサル・公的研修等)も進んでいる。ミックストキャリアの社会的受容は、こうした社会制度の変化とも整合的であり、教育プログラムの社会実装を検討する本研究の立脚点となる。今後は、「誰に」「どんな内的・行動的変化を伴い」「社会に何を還元するか」を明確に据えたプログラム設計と、その検証フレームを構築するフェーズへと展開していく。
東アジア地域においてもソーシャル・イノベーションへの注目はこの20年間に大きく進んできている。欧米の影響も大きいが日本との交流も一定の役割を果たしており、東アジア地域に固有の問題に対するソーシャル・イノベーションが進みつつある。
具体的には農村地域の衰退問題や貧困問題、障がい者(児)福祉問題など、共通の課題に対して、それぞれに、マーケットの力を活用しながら、問題解決に当たっている。そこでは、従来の地域開発や社会福祉の観点を超えて、イノベーティブな視点が積極的に導入されている。ICT 技術の革新のみならず、ビジネスモデルの革新、また人的資源開発の革新も見られる。
加えて、制度的に政策的にも、これらの問題に対して取り組みが進んでおり、こうした社会的な起業に関する法人制度の整備、資金や人材の供給、中間支援組織の活動などが、活発にみられる。日韓台に共通する課題や取り組み、社会的な活動の活発化とそれを支える制度整備が顕著である。
本分科会では、こうした現状認識を共有したうえで、相互比較による研究の進化と各国におけるソーシャル・イノベーション活動の活発化への貢献を目指したい。このパネルでは、韓国については佐野淳也会員、小林和子会員、台湾については服部崇会員、服部篤子会員、松榮秀士会員の参加を得て、モデレーターとして新川達郎が加わり、パネルディスカッション形式で比較検討を行うこととする。
13:20 分科会の趣旨:新川達郎担当 5分
13:25 韓国のソーシャル・イノベーション事情紹介:新川 10分
13:35 台湾のソーシャル・イノベーション事情紹介(制度や取組について):服部崇先生 10分
13:45 韓国のソーシャル・ビジネス事例:小林和子先生 10分
13:55 台湾のソーシャル・ビジネス事例:松榮秀士先生 10分
14:05 日本韓国台湾のSI比較;その異同 服部篤子先生10分
14:15 討論(報告者発言)と会場質疑応答 30分
14:45 結びと今後の研究に向けて:新川 5分
モデレーター:新川達郎(同志社大学)
報告者(1):台湾のソーシャル・イノベーション及びソーシャル・ビジネスの政策や制度の動向、概況について 服部崇(京都大学)
報告者(2):韓国のソーシャル・イノベーション、ソーシャル・ビジネス関連の政策や制度面について新川達郎(同志社大学)
報告者(3):韓国の実践面として、フィールドリサーチの結果報告 小林和子(同志社大学)
報告者(4):台湾の実践面として、フィールドリサーチの結果報告 松榮秀士(PaKT)
報告者(5):両国の事例比較 服部篤子(大和大学)
龍谷大学、琉球大学、京都文教大学の大学院では、2025 年 4 月から「大学連携型ソーシャル・イノベーション人材養成プログラム」をスタートしました。この度、日本ソーシャル・イノベーション学会の分科会では、地域の社会課題に取り組む企業(S 認証取得企業)の方々と、大学院生が一緒に“SI人材養成の効果と課題”について語り合うパネルディスカッションを行います。
現場で奮闘する企業の声と、学びの場で意欲的に活動する学生の意見が交わることで、SIキャップストーンの効果と課題について皆で考える機会になります。ソーシャル・イノベーションを学ぶ人・実践する人・興味のある方、どなたでもご参加いただけます。
1)開会挨拶
2)大学連携型ソーシャル・イノベーション人材養成プログラムについて
3)SI パネルディスカッション ―S 認証企業と大学院生のディスカッション―
テーマ:SIキャップス
パネリスト:株式会社アグティ 代表取締役社長 齊藤徹 氏
京都信用金庫ソーシャル・グッド推進部長 石井規雄 氏
大学院生:北野嘉秀(龍谷大学)、山中智子(京都文教大学)、
成松正樹(龍谷大学)、安里恵美(琉球大学)
モデレーター:龍谷大学政策学部長 中森孝文
4)閉会
今大会のテーマである「共生とソーシャル・イノベーション:人と社会の成長を問い直す」について、学生が主体となり探究する場とする。
最初に、関西学院大学人間福祉学部社会起業学科(川中大輔研究室)・龍谷大学政策学部(大石尚子研究室)・神山まるごと高専(佐野淳也研究室)の3つの大学・高専の学生たちが集い、それぞれの教育実践や活動内容について報告を行う。
次に「共生社会を実現するソーシャルイノベーターが生まれる場づくり」をテーマに、どのようなカリキュラムやプログラム、また教育環境や文化といったものが、そうしたイノベーターが育ち合う場の形成において重要なのかを、参加者とともに深めるワークショップを行う。
分科会の進行においては、神山まるごと高専 Tapaz(ワークショップの企画運営を行う学生チーム)のメンバーがファシリテーションを担い、他大学の学生とともに対話を行う。テーマについて参加者が立場・属性を超えて自由に対話する場とするが、特に学習者である学生(高校生年代含む)自身がメインとなり、SI を学
ぶことを通じての人間形成に向けた教育や学校のありかたについて語り合える内容とする。
そしてこの分科会を通して、大会終了後も SI と共生をテーマにした学生間のつながりが生まれ、続いていくことを狙いとしたい。
全体進行:佐野淳也(神山まるごと高専デザインエンジニアリング学科 准教授)
ファシリテーション補助:神山まるごと高専 学生チーム Tapaz
実践報告:大石尚子ゼミ(龍谷大学政策学部)
川中大輔ゼミ(関西学院大学人間福祉学部社会起業学科)
佐野淳也ゼミ(神山まるごと高専デザインエンジニアリング学科)
濱上隆道(富士通株式会社 CEO 室 神山まるごと高専担当)
名和真結美・宮野柊太・付媛媛・下島夏(神山まるごと高専 学生)
13:20 あいさつ/趣旨説明/出演者紹介
13:25 「共生社会を実現するソーシャルイノベーター」とは?(佐野)
13:30 ソーシャルイノベーター育成の教育実践(10 分✕3事例)
・神山まるごと高専デザインエンジニアリング学科(佐野淳也研究室)
・関西学院大学人間福祉学部社会起業学科(川中大輔研究室)
・龍谷大学政策学部(大石尚子研究室)
14:00 ワークショップ
テーマ:「共生社会を実現するソーシャルイノベーターが生まれる場づくり」に大切なことは
何だろう?
14:45 全体まとめ/各大学・高専からの学生コメント/アンケート
14:50 終了
*学生のみなさんの参加を歓迎します!
社会を変革するソーシャル・イノベーターの育成に取り組む大学が国内外で増えている。社会全体でソーシャル・イノベーションを促進するためには、アカデミアに加えて、国・地域レベルの行政セクターや中間支援機関、金融機関、民間企業などの民間セクターとも連携してエコシステムを構築していくことが重要である。2006年にグラミン銀行とともにノーベル平和賞を受賞したムハマド・ユヌス博士が、ソーシャル・ビジネスの普及にあたって国内外の教育・研究機関との提携を進めたことにより、2010年代から2020年代にかけて各国の大学にユヌスセンターの設立が相次いだ。本分科会では、そのような背景を踏まえ、各大学のユヌスセンターで推進されている教育プログラム等の取り組みや知見を発表した上で、ソーシャル・イノベーション・エコシステムにおいて大学が果たすべき役割について議論を行う。登壇者には、龍谷大学ユヌスソーシャルビジネスリサーチセンター長の白石克孝教授、九州大学ユヌス&椎木ソーシャル・ビジネス研究センターの運営委員でソーシャルビジネス・アカデミアネットワークの代表理事でもある、アシル・アハメッド准教授のほか、ポルトガル、台湾などのユヌスセンター関係者がオンラインで登壇予定。
白石克孝教授(龍谷大学ユヌスソーシャルビジネスリサーチセンター長)
アシル・アハメッド准教授(九州大学ユヌス&椎木ソーシャルビジネス研究センター運営委員、ソーシャルビジネス・アカデミアネットワーク代表理事)
Carlos Azevedo氏(Adjunct Professor of Social Innovation, Catolica Lisbon Univercity)※オンライン参加
Faiz Shah氏(Executive Director, Yunus Center at Asian Institute of Technology)
井上良子(世界人権問題研究センター、龍谷大学リサーチアシスタント)
13:20〜13:25 オープニング(本セッションの趣旨説明、登壇者紹介:井上)
13:25〜14:00 登壇者より各センターの活動紹介(8分×4名)
14:00〜14:45 パネルディスカッション
14:45〜14:50 まとめ・クロージング
*本セッションは基本的に英語での開催となります(投影資料については、和訳対応を予定)
「変革の触媒 ─ 社会を変えるアートの力」(Catalyst for Change – The Powerof Art to Transform Society)と題し、代表者スプリー ティトゥス(琉球大学)が企画する本分科会は、ショートプレゼンテーション、オープンダイアログ形式で進行する。
現代社会が直面する多岐にわたる課題に対し、芸術が社会変革を促す触媒となり得る可能性を探る。社会が新しい方向へ向かう前に価値観の変容や想像していく体制が必要であり、そこにアートの大きな役割がある。社会が向き合えるイメージづくりの一環、また人間の関係性を変える実践実験がすでに芸術で行われている。1960年代から行われたフルクサス、具体美術、またドイツのアーティスト、ヨーゼフ・ボイスが言語化した「社会彫刻」などから社会の変容を起こし続けるアートの役割が明らかになり、また1990年代から現代美術で注目されている「ソーシャル・プラクティス」や2010年代からの「Arte Util」(有用性のある芸術)などの手法や運動では、よりソフトな働きかけのアートが具体的に社会を変えるツールとしても議論されている。
本分科会では具体的なアート実践が地域コミュニティの意識変容や地域の課題への関心をいかに喚起し、持続可能な社会形成に貢献しているかについて語り合う場を設ける。事例として、墨田区向島で「現代美術製作所」として地域と協働し、現在は京都市上京区にてAnewal Galleryを運営する曽我高明氏、そして「まちくさ博士」として活動するアーティストの重本晋平氏に登壇いただき、それぞれの実践を紹介いただく。これらの事例をもとに、芸術が持つ社会変革の可能性と課題について多角的に議論する。
「オープンダイアログ」とは、開かれた参加型対話を指す。本分科会は、従来のパネルディスカッション形式に留まらず、プレゼンテーション終了後にオーディエンスを交えた議論を展開することで、芸術とソーシャル・イノベーションの新たな接点を見出すことを目指す。
スプリー ティトゥス(琉球大学)
本分科会の企画代表者であり、ファシリテーターを務める。社会変革における芸術の役割、特にソーシャル・イノベーションとアートの融合に関する研究と実践に深く携わっている。
曽我 高明(キュレータ、Anewal Gallery・旧現代美術製作所ディレクター)
元々、東京都墨田区向島で活動を開始し、現在京都を拠点にしています。地域コミュニティとの協働を通じて、場所の歴史や文化、人々の記憶に根差した現代美術作品を制作。アートを介して地域のアイデンティティへの意識変容を促し、コミュニティの活性化に貢献している。
重本 晋平 (まちくさ博士・アーティスト)
1985年京都府八幡市生まれ。京都精華大学デザイン学科卒業。在学中、日常の風景をもっとワクワクさせたいと考え、「まちくさ」を考案。まち歩きで見つけた草に名前をつけ、分類し、図鑑や絵本を制作する視点を築く。同時に参加型路上探検プログラム「まちくさワークショップ」を開始。自らまちくさ博士となり、企業やNPOと連携しながら全国の小学校や施設でワークショップを展開。2018年に綾部市へ移住後も精力的に活動している。
1)開会挨拶・本分科会の趣旨説明(10分)
2)登壇者による活動紹介(各10分 × 3名程度、計30分)
3)オープンダイアログ(登壇者間および参加者とのQ&A・対話:45分)
4)まとめ、閉会挨拶(5分)
本分科会は、芸術が社会に与える影響や、社会課題解決における芸術の可能性に関心のある方であれば、どなたでも参加できる。特に、現代美術、アート、文化を中心に実践するソーシャル・イノベーション、地域活性化、環境問題、コミュニティ開発などの分野に関心を持つ研究者、実践家、学生、一般の方々の積極的な参加と対話を歓迎する。